東電の福島原発収束工程表

本日東電より、福島原発事故の収束に向けた工程表を発表しました。
それによると6~9ヶ月で冷温停止後、チェルノブイリ原発と同様に石棺といった内容です。

事故当初の制御不能の状態だったときから考えると、この工程表が出てきたということが、実際に福島原発事故が少し解決へ向けて前進している証拠でもあると思われます。
実際にその工程表のコピーと本当に計画通りに進むのかという点について記載します。

東電の工程表

東電の工程表のPDFはこちら

工程表によると、

  1. 原子炉・使用済み燃料プールの冷却
  2. 放射性物質で汚染された水の閉じ込めや保管・処理、大気・土壌における放射性物質の抑制
  3. 放射線量の測定・低減

の3分野について課題を発表しました。
その上で、今後3カ月後目標に実施する「ステップ1」と、6~9カ月後に実施が目標の「ステップ2」に分けて対策を発表しました。

  • 1号機と3号機は3ヶ月後までに原子炉格納容器を水で満たして、熱交換器の設置などにより安定した冷却。
  • 圧力抑制室が破損している2号機については、破損場所の密閉作業。
  • 使用済み燃料プールの冷却については、1、3、4号機は外部から、2号機は通常の冷却ラインを使って淡水を注入している。9カ月後までに安定的に冷却できるシステムの構築を目指す。
  • 5・6号機も核燃料を取り出す。
  • 放射性物質放出の防止策は、3カ月間はがれきの撤去作業。9カ月後までに応急措置として換気やフィルター設備を備えた原子炉の建屋カバーを設置する。
  • 最終的にコンクリートで、原子炉全体をチェルノブイリ原発と同様の石棺。

実際に工程表の計画通りに進む可能性はかなり低いと考えられる理由

会見した勝俣恒久会長は「長期的な展望はみえていない」「工程表は目標として掲げたので、計画通りにいくように努力をする」と答えていましたが、実際に計画通りにいく可能性は低いと考えられています。

その理由は現時点で、不明点が多く、原子炉内部の損傷度合いさえ把握できていない状況では、今後の目標を示したにすぎない点です。
多くの方が楽観的すぎるという指摘をしております。

また、これまでの窒素封入や汚染水漏洩への対策が実際に遅れていることや、さらにこれまでの事態になった要因である東電や政府の対応等を考えると、とても計画通りに行くようには思えません。
そして安定冷却と放射能物質の封鎖が終わるまでは放射能物質の飛散や土壌汚染が進むと考えられます。

ただ、事故が収束したとしても土壌汚染等の放射能汚染と、実際に避難地域外で被曝しているであろう人々がどの程度いるのか、また、風評被害等が問題になってくると思われますが、「原発はどん底までいった、ほぼ制御不能の所まで行った」と細野補佐官が発言したように、最悪の事態の一歩手前まで進んでいたことを思うと、こういった工程表が出てきたこと事態が進歩ではあると思われます。

6 thoughts on “東電の福島原発収束工程表

  1. 最終的に石棺と言っても、少なくとも5年はかかるとか(?)。それまで、放射能はいろいろなかたちで、漏れ続けるんですよね?って、ことは、チェルノブイリとは違うけれど、長期に渡って、汚染され続けるー日本は、癌の最多国となっていくのでしょうね。また、医療関係もパニックになるのかしら?遠回しに、薬品会社とかもまた、儲かるのでしょう。世界のこの悪循環が、とても悲しいです。

  2. >itajinさんへ
    石棺の期間についてはたしかに名言されませんでした。
    チェルノブイリでは大量の労働者を導入して被曝覚悟の作業で半年程度で完了させておりましたが、今回のはどの程度かかるのか不明です。
    特に石棺に辿りつくまでが難しいと思われます。
    現在も放射能物質は出続けてますので、汚染がどんどん進むのは確かだと思われます。

  3. 早くも回答、ありがとうございます。原発のこと、調べているうちにこちらのブログにいき届いたのですが、先のコメントのあと、いろんな記事を見て、とても気に入りました。とても、謙虚な書き方ですが分かりやすく説明されて、優しさあふれるブログですね。これからも、がんばってください。
    ところで、私は、イタリアに16年住んでいます。ですから、ヨーロッパの悲観的なニュースから、日本のニュースを比べ始めたわけですが、このところ、ヨーロッパでも公表されなくなってきたことが、余計心配になりました。今はかえって、日本のブログのほうが、より情報を集めやすくなっています。日本人がこれだけ、真剣になっているいるのは素晴らしいことですが、夏に帰国の予定を卑怯にも、伸ばそうかと思っています。7歳と10歳の子供のことを考えると、夫は猛反対。実家は神奈川ですから、遠いといえば、遠いのですが、チェルノブイリの事故から考えると、やっぱり危ないんですよね?ほんとに複雑な気持ちです。これは、海外にいるから大げさと思われるかも知れませんが,医者たちも反対するんです。

  4. >itajinさんへ
    そう言っていただき嬉しく思います、ありがとうございます。
    ヨーロッパのほうでは報道が少なくなってきているのですか?
    海外のほうが拡散情報などをしっかり報道されていたので、報道されなくなったというのは爆発の危険性が低くなったからでしょうか。
    チェルノブイリ原発事故のようになると神奈川でも危険なのは変わりないですが、爆発の危険性はかなり低くなってきているのも事実です。
    おそらく今後の問題は土壌汚染や海洋汚染などの放射能汚染が中心になってくるのではないかと思います。
    帰国の予定を伸ばすのが卑怯だなんて思わないでくださいね、愛する人の心配等から避難することに何の後ろめたさも感じる必要はないと思いますので。

  5. 以前、アドバイスしていただきましたAYUと申します。
    私の身内が今も福島第一原発にいます。
    工程表がだされましたが・・・
    報道でも出てきていますが、
    原子炉建屋内は、とても人が入れる状況ではありません。
    そして、ロボットが入る前、数日前から
    現場にいる私の身内を含む東京電力の社員たちは、
    早く、原子炉建屋内に入って、冷却機能回復の為の作業をするように求められていました・・・身内としては、心が潰れる思いでいました。
    結局、本店社員がロボットで遠隔操作で調査することになりましたが・・・
    いつ、現場にいる社員たちが、使い捨てにされるか分からないと危険を感じています。

    今まですっと、あまりにも、実際の話とは違ったことが
    報道に流れています。
    国や会社に見捨てられてしまうのでしょうか・・・。

  6. >AYUさんへ
    現場は想像以上に過酷と聞きます。
    現場で作業されている方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
    原子炉建屋内での放射線量は1シーベルト以上のところがあり、きちんと線量さえ把握できていないようです。
    チェルノブイリ原発事故のときは労働者に無理を強いて被曝させながらも無理矢理修復しましたが、現在も被曝の後遺症に苦しんでいる方々が多数いらっしゃいます。
    今回の原発事故での現場ではそのようなことがないことを願っておりますが、政府の隠蔽などのずさんさが浮き彫りになってきたので、現場の作業員の方々が心配です。
    政府にはもっともっと現場の人や住民の安全を思った行動をしてほしいですね。
    身内の方が健康なままもどってこられることを本当に願っております。

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